Last up date.2020.2.28
静岡 レインボー トレインズ トップページ > 静岡一番モノガタリ / 駿河湾と深い話
伊豆半島最南端の石廊崎と、御前崎を結ぶ線に囲まれた海域である駿河湾。伊豆半島は元々、日本列島の南方に位置するフィリピン海プレートに浮かぶ、火山島のひとつでした。約60万年前、その島が火山活動により列島にぶつかり半島となったことで、駿河湾が形成されたといわれています。最深部の水深は2500m。日本列島にある湾のなかで、いちばん深い湾です。
深遠なる駿河湾はしばしば、海洋学や水産学、環境学などにおける研究の材料として活かされてきました。三保半島にある東海大学海洋学部は、海を総合的に学べる全国唯一の学部であり、日本有数の研究機関でもあります。「駿河湾を通して海と人とのつながり、生物や環境の多様性について研究に励んでいます。当大学が保有する海洋調査研修船・望星丸では実際に学生を乗せて、洋上研修をするんですよ」。闊達にインタビューに応えてくれたのは、東海大学教授の千賀康弘さん。「海の奥のハナシは、実物を見せて説明できないのが歯がゆい」と苦笑い。しかしその地道な積み重ねが、静岡のさまざまな産業発展に寄与してきたのです。
日本一の深海湾がもたらす恩恵は、一言では語りつくせません。日本の魚類は淡水魚をふくめ約2300種といわれていますが、駿河湾にはそのうち約1000種もの魚種が生息しています。清水港や沼津港などの一大観光地を含め、大小40以上ある漁港の存在は、大いなる駿河湾の生命に支えられてきました。「深いから魚種が多い。ではなぜ深いと魚種が多いのか。その理由は水温。水温は深さで変わり、深くなればなるほど冷たくなります。環境によって住む生物が変わるのは、自然なことですから」と、千賀さん。珍しい魚も多く、由比港沖に生息する桜えびは言わずもがな、静岡ならではの味覚です。昨今注目を浴びている深海魚もその一例。稲取や下田で揚がる金目鯛、戸田の高足ガニも深海魚の一種として、人々の食卓を楽しませています。「沼津の大瀬崎がダイバーのメッカである所以は、列島南岸から暖流の黒潮が流れ込むからなんですよ。水温が高い海中でしか見られない生物がたくさん見られるんです」。海について語る千賀さんは、とにかくイキイキとして楽しそう。水温の高い伊豆半島沖では、珍しい種のクジラの姿も確認されているのだとか。未知なる海の世界に広がる希望を、教授の目が物語っていました。
東海大学で学ぶ学生は、水族館の飼育員や航海士、水産食品開発、あるいは防衛省など、海に関わる職に就くことを夢みています。駿河湾という舞台で育った力。それが今も私たちのごく身近なフィールドで、花開いています。